大阪高等裁判所 昭和24年(を)1243号 判決 1949年12月14日
被告人
坂井久志
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役六月に処する。
本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
弁護人原彌生控訴趣意第一点について。
しかし原審公判廷における被告人の供述によれば本件各物件は被告人が京都軍政部舞鶴分遣隊ヱンジニヤスクール烹炊場に調理人として雇われ勤務中、同所で日々手交された調理材料の使用残品を翌日分に繰越使用のため調理場にある棚にしまつてあつたもの、あるいは配膳をさげたときの残品であること及び帰宅の際は日日門で身体檢査を受けることになつていることが各窺われる。このやうな場合にあつては、物件はすべて雇主または管理者の占有にかゝり被告人の占有に属さないものと解するのが相当であるから、これを取り出し持ち帰つた以上窃盜罪を構成すること勿論であつてこれを目して橫領罪なりとする所論には賛同し難い。
(註、本件は量刑不当により破棄自判)